優しい心と空っぽの言葉

Story

　想像していたよりも寒い秋の空を見上げながら、秋考はため息をつく。
教師志望の彼も、あと１年もすれば私立大学の学生ではいられない。

　秋考は、教授から出された、「教師を目指す理由」という課題に悩まされていると同時に、もうひとつ大きな悩みを抱えていた。

「私たち、もう別れた方がいいんじゃないかな」

　１年以上付き合っていた彼女、美帆から突然別れを告げられたのだ。
幸いにも、一度距離を置いて考え直すという結論に落ち着いたものの、関係改善のための糸口は見えない。

　そんな中、美帆の妹である夏帆から少し奇妙な提案をされる。
それは、夏帆が秋考と美帆の仲直りを手伝う代わりに、自分の家庭教師をしてほしいというものであった……。

すべてのキャラクター二階堂夏帆二階堂美帆田中三好秋考

二階堂夏帆

「元気で明るい妹！」

秋考の彼女である美帆の妹。

現在、受験を数ヶ月後に控えているため、猛勉強中。
今まで部活に専念してきたため、勉強が得意というわけではないが、集中力は抜きんでている。

意外にも姉よりも家事が得意で、自慢しているが、同時に秋考のために努力して苦手な家事を克服した美帆を尊敬している。

まだ、中学生ではあるが、自分の決めたことを貫き通す強い信念を持っている。

とある目的のために、秋考に家庭教師をお願いしようとする。

二階堂美帆

「彼氏思いの優しい彼女」

秋考と１年以上前から付き合っている。
妹とは対照的で穏やかな性格。その優しい性格ゆえに悩みをため込んでしまうことも少なくない。

しかし、秋考に対して別れを告げるなど、思い切った行動を取ることがあり、姉妹の似ている点でもある。

田中

「不真面目な悪友」

秋考と同じゼミの学生。
秋考のゼミは全員が教師志望のはずだが、彼が教師になる姿は到底想像できないほど不真面目である。
しかしながら、今まで順調に進級しているところをみると、要領はいいのかもしれない。
意外にも真面目学生である秋考と仲がよい。

三好秋考

「優しさゆえに、本当の自分が見えない」

私立大学の学生で教師志望。
小さい頃から優等生で、高校時代は吹奏楽部に所属し、活躍した。
しかし、それが主体的なものというよりかは、他人の目を意識してのものだといういうことは、本人も少し自覚している。
その主体性のなさからか、教師を志望する理由という課題に対しては、自分でも信じられないほど苦戦することになる。

大学でも、成績、評判ともによく、周囲からの信頼も厚く、よく頼まれごとをするが、大抵断ることができない。