スタジオジブリ(2002)「猫の恩返し」より

物語は主人公の成長を描くものです。

主人公の成長は、物語全体を通じて表現することになります。

それに加えて、物語の序盤と終盤に簡単なシーンを追加するだけで、主人公の成長を示すことのできるテクニックがあります。

シンプルだが、非常に効果的なテクニックなので、ぜひ覚えて使用してみてください。

始まりと終わりに同じ出来事を起こす

ステップ1 序盤に主人公が問題を抱えていることを示すシーンを描く

物語の序盤で主人公は問題を抱えており、その問題のせいで、好ましくない行動をとってしまいます。

たとえば、「人を思いやる心がない」という問題を抱えた主人公の場合は、「通学の途中に困っている老人を見ても、見て見ぬふりをする」という行動をとってしまうでしょう。

「人との約束を守れない」という問題を抱えている場合は、「遅刻しているのに歩いて約束の場所に向かう」などが考えられます。

このように物語の序盤で主人公が問題を抱えており、それが実際の行動にも現れている様子を描くのです。

この後の物語では、主人公が抱えている問題を解決していくことになります。

ステップ2 終盤に主人公は同じ出来事に遭遇するが、違う選択をする

主人公はステップ1で描いた場面に再度遭遇します。しかし、序盤のシーンと異なり、主人公は一つ次元の異なる選択をすることになります。

たとえば、「人を思いやる心がない」という問題を抱えていた主人公の場合は、「通学の途中に困っている老人を見て、助けに行く」という行動をとるでしょう。

「人との約束を守れない」という問題を抱えていた場合は、「遅刻してしまいそうだから、必死に走って約束の場所に向かう」などが考えられます。

少しひねった展開にしたいのであれば、ステップ2では下記のようにするのもよいでしょう。

「主人公と待ち合わせをしているヒロインが遅刻しそうになる。そのため、走って約束の場所に向かうと、思いのほか早く到着してしまう。しかし、そこにはすでにヒロインを待っている主人公の姿が……」

実例

ここでは、実践でも使いやすいように実例をあげていきます。

優しい心と空っぽの言葉

手前味噌ですが、シンプルな例として当サークルの作品「優しい心と空っぽの言葉」の例を紹介します。

物語の冒頭のシーン(1)

主人公はゼミの教授に仕事を手伝ってもらえないかと声をかけられます。

頼み事を断ることのできない主人公はそれに応じることになります。

物語の冒頭のシーン(2)

教授の手伝いは想像以上に時間がかかり、帰る時間が遅くなってしまいます。

これをきっかけに、主人公は断れないという自分の問題のせいで、彼女との関係に問題が生じていることを回想します。

物語の終盤のシーン

物語の終盤。主人公は物語の中で成長し、彼女との問題も解消しています。

以前と同じように、教授に手伝ってもらえないかと声をかけられますが、それを断り、彼女との約束のために待ち合わせ場所に向かいます。

猫の恩返し

映画「猫の恩返し」でも効果的にこのテクニックが使われています。

映画の冒頭のシーン

スタジオジブリ(2002)「猫の恩返し」より

映画の冒頭で、主人公・ハルが寝坊するシーン。

目覚ましを止めて、二度寝をしようとします。しかし、はっと思い直して起き上がり、急いで朝の準備をします(学校には遅刻しまう)。

ハルの欠陥である「自分の時間を生きられない」という問題を象徴的に描いています。

映画の終盤のシーン(1)

スタジオジブリ(2002)「猫の恩返し」より

ハルが「猫の世界」での冒険から帰ってきたあとに描かれるシーン。

冒頭のシーンと同じく、目覚ましを止めて、二度寝をして……というくだり。しかし、起きたのはハルではなく、その母親でした。

映画の終盤のシーン(2)

スタジオジブリ(2002)「猫の恩返し」より

母親がリビングにいくと、今まで寝坊ばかりしていたハルの姿が! 母親は日曜にも関わらずハルが早起きしていることに驚きます。

ハルは特別なことではないように「友達と遊びに行くから」と答えます。

些細なシーンではありますが、物語の冒頭と終盤で同じ構造のシーンを用いています。

これによって、ハルは物語のなかで成長し「自分の時間を生きられない」という問題が解消されたことを示しているのです。

冒頭と終盤でまったく同じシーンではなく、最初は主人公、次は母親と対象が異なっています。こうして、少しひねってある点に「さすがジブリ」と思わされます。

まとめ

作品例でも示したように、下記のような簡単なステップで主人公の成長を示すことができます。

ぜひ実践に取り入れてみてください。

  • 物語の冒頭で主人公が抱えている欠落によって、現実の世界でも問題が生じていることを示す
  • 物語の終盤で、冒頭に経験した場面に遭遇するが、主人公は欠落を克服したため、現実の世界では問題が生じなくなったことを示す
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